更新日：2019.2.26

インプラントってなに？

最近、街を歩いているとインプラントをお薦め（宣伝？）している歯医者さんをよく見かけますよね。実際、私も患者さんにインプラントについて尋ねられる機会が増えたなと実感しています。
ご質問の中身は多岐にわたるのですが、インプラントと入れ歯、差し歯との違いを教えてほしいというご質問がかなり多いことを考えると、関心が高まっているのかなという印象を受けます。
そこで今回はインプラントについての皆さまの疑問にお答えしていきたいと思います。

まずインプラントと入れ歯、差し歯の違いですが、「インプラント」は歯がないところにチタン製のボルトを埋め込んで、さらにその上から差し歯を入れることを言います。
それに対して「差し歯」は、患者さん自身の歯の外形部分を削った状態にし、その上に人工の歯を被せる方法。よって歯の取り外しはききません。差し歯には異物感が少なく、また自分の歯のようにしっかり噛めるというメリットがありますね。もちろん通常のケアは必要ですが、そんなに神経質にならなくてよいのも良い点でしょう。
そして「入れ歯」は、歯のないところに取り外しがきくタイプの歯を入れる方法。歯がない部分の両隣の歯に金属製の金具を引っ掛けて使用します。

それともうひとつブリッジと呼ばれる方法もあって、これは歯がないところの両隣の歯を削り、そこに被せる冠と一体となっているもの。要は両隣の歯を土台にして一体型の人工歯を支える方法ですね。入れ歯と違って固定されるので取り外しはききません。連結タイプの差し歯と考えるとわかりやすいでしょうか。

ここまでご説明したように、インプラントと差し歯とでは、元の歯があるかないかの大きな違いがあるので、そもそも概念が異なるんです。
インプラントと比較されるのはむしろ入れ歯のほうなんですね。では、それを踏まえてインプラントと入れ歯とではどちらがお薦めなのでしょうか。

インプラントと入れ歯、お薦めはどっち？

インプラントと入れ歯の違いという点では、手術の有無は大きいですね。入れ歯は手術がない分、コストもずっと安い。インプラントは保険適用外で、実費のみです。費用はおよそ１本40万円ほどかかってきます。加えてメンテナンスにも費用がかかります。
また、期間的にもインプラントのほうがかかります。手術をしてインプラント自体が骨にしっかりとくっつくのに時間が必要となるんです。１本を入れるのに上の歯で半年前後、下の歯だと３カ月前後。重力の関係で上の歯と下の歯とでは、結合する早さが変わってくるんです。
費用と治療期間に加え、インプラントは手術が必要となりますので、血が止まりにくいなどのリスクもあります。よって、心臓病や高血圧、糖尿病、骨粗鬆症の方には手術が行えません。
患者さんのライフスタイルやご予算、手術ができるかどうかなど体のコンディションにもよりますので、ご自身に合った方を選ばれるのがよいと思います。

インプラントに関する誤解

これだけの費用と時間がかかるのだから……と思われているかどうかはわかりませんが、インプラントを一生ものだと思っている患者さんも多いですね。
ただ残念ながら、インプラントは決して一生ものではありません。定期的なメンテナンスも必要で、交換が必要な場合もあります。人工の歯だけを交換すればオーケーというケースならまだいいのですが、なかには埋め込んだボルトから交換しなければならないケース、さらにインプラント自体を取るしかないケースもあります。
また、インプラントにすると見た目もきれいになるので、審美的な観点から希望される方もいらっしゃるのですが、これも間違った認識です。
インプラントとはそもそも歯がない方に対して行う治療法です。欠損がない場合にはお薦めしません。歯がある方にはインプラントではなく差し歯などの審美歯科や矯正を行います。

ここまでインプラントに対して少し厳しい意見を述べてきましたが、両隣の歯を削らなくていい点や見た目がきれいな点などのメリットもあります。
実際にどれを選ばれるかは、かかりつけの歯科医にご相談のうえ、治療期間やコスト、そしてリスクなどをよく考えたうえで行っていただければと思います。
それでは今日はこのあたりでお開きにしましょう。

「院長の気になる話」一覧へ戻る